内容紹介
私たちのまわりには、さまざまな「環境」がある。
そこには、空気や温度、衣・食・住、ストレスなど、毎日経験するものが含まれる。
環境が健康や病気にどのように影響するのかは、私たちの生き方そのものである。
これまでの研究から、環境と遺伝子の働き方が深く関係するとわかってきた。
遺伝子のON/OFFを決めるしくみを「エピゲノム」といい、環境の情報を記憶する装置になっているようだ。
本書では、酸素・温度・食事・化学物質・ストレス・時間などの身近な環境を取り上げながら、
細胞が環境をいかに感知し、応答し、記憶していくのかを、エピジェネティクスをキーワードに読み解く。
最新の生命科学からみえてきた、環境と健康・病気の関係を知ることができる。
目次
1章 細胞の記憶 ―環境とエピゲノム―
細胞の個性はどう決まるか/細胞の環境応答とは/ゲノムと遺伝子/遺伝子の形と働き/エピジェネティクスとは/エピゲノムのしくみ/エピゲノムによる記憶/エピゲノムのつくられ方/まとめ
2章 空気 ―酸素のもつ功罪―
空気と呼吸/体内の化学受容体/酸素を用いたエネルギーの産生/貧血とエリスロポエチン/エリスロポエチンとスポーツ/細胞の低酸素センサー/がん細胞のワールブルグ効果/酸素の功罪/低酸素ストレスに対する記憶はあるか/まとめ
3章 温度 ―暑さ・寒さに備える―
温度の単位/皮膚という感覚器/体温調節と発熱/熱中症/熱ショックへの応答/筋肉が熱をつくる/温度に対する細胞記憶/まとめ
4章 栄養 ―食事と生活習慣―
生命活動とエネルギー代謝/食事はメモリーされるのか/ヒトの個体発生とDOHaD学説/栄養がエピゲノムを変える/飢餓に働くサーチュイン/肥満に働くLSD1/DOHaD学説を再考する/ダイエットとリバウンド/まとめ
5章 ケミカル ―金属と化学物質―
環境汚染と公害/職業とがん/エクスポゾームの考え方/エコチル調査/環境物質に応答するしくみ/DNAの損傷に応答する/まとめ
6章 感染 ―ウイルスと免疫―
ウイルス感染/感染とがん/生まれつきのトーチ症候群/自然免疫/獲得免疫/ワクチンと免疫記憶/免疫が異常になると/免疫の老化/まとめ
7章 ストレス ―現代社会を生きる―
心身の感覚とストレス/グルココルチコイドの働き/グルココルチコイドの多様な作用/グルココルチコイドの作用が記憶される/親の愛情とエピゲノム/ストレスとDNAのメチル化/まとめ
8章 時間 ―加齢と老化―
生命のプログラム/加齢と老化の関係/平均寿命と健康寿命/個体レベルの老化/早老症/老化細胞とは何か/細胞老化のメカニズム/細胞老化のエピゲノム/まとめ
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