内容紹介
本書は、総合科学部21世紀科学プロジェクト群の教養教育研究開発プロジェクト「『教養教育』の進化と構造」における論考を書き改めたものである。第1部は、ヨーロッパにおける教養教育の進化過程を念頭に、進みつつある高等教育改革「ボローニャ・プロセス」を取り上げる。またその流れをを受けながら別の進化を遂げたロシアの教養教育を論ずる。第2部は、「リベラル・アーツ」の伝統を持つアメリカ合衆国の教養教育の歴史と現在を展望、そして、欧米による植民地化を経験したメキシコ、フィリピン、台湾の高等教育における教養教育の受容と位置付けを考察する。第3部では、日本の教養教育の諸問題を論じる。
目次
【第1部】
第1章 エラスムス計画からボローニャ・プロセスあるいはエラスミスム――知識基盤経済の中の高等教育
1 エラスムス計画からボローニャ・プロセスへ
2 「知識基盤経済」確立のためのヨーロッパの変質
3 エラスムスとエラスミスム
第2章 フンボルトの悪夢?――ボローニャ・プロセスとドイツにおける大学教育改革
1 ドイツにおけるボローニャ・プロセス
2 フライブルグ大学における改革
3 改革の長期的評価
第3章 オーストリアの大学改革――ボローニャ・プロセスによるカリキュラム改革
1 戦後オーストラリアの大学改革
2 ボローニャ宣言と2000年以降の大学改革
3 入門オリエンテーション段階(StEOP)の導入
4 StEOPの実情と評価
第4章 ボローニャ・プロセスとフランスの大学改革
1 フランスにおける「大学」とその歴史的背景
2 LMD改革と一般教養
3 LRU法(大学の自由と責任に関わる法律)と抗議運動
4 統合と連携――「研究・高等教育拠点」(PRES)から「大学・高等教育機関共同体」(COMU
E)へ
第5章 転換期にあるロシアの大学と教養教育――モスクワ国立大学と極東連邦大学
1 学術体制・高等教育改革の嵐
2 モスクワ国立大学
3 極東連邦大学
4 カザンにて――おわりに
【第2部】
第6章 アメリカ合衆国の教養教育の歴史的展開の一断面――19世紀後半から20世紀前半のハーバード大学
を事例として
1 19世紀後半から20世紀前半のハーバード大学
2 エリオットによる自由選択科目制
3 変化への胎動
4 ローウェルによる「集中‐配分」方式
5 「集中‐配分」方式を支えた理念
第7章 カリフォルニア州立大学における一般教育カリキュラム
1 CSUの一般教育カリキュラムの編成基準
2 サンフランシスコ州立大学(SF State)の事例
第8章 米国のリベラル・アーツ・カレッジの変容――マウント・ホリヨーク大学のカリキュラム
1 カリキュラムの変化
2 授業料の推移
第9章 メキシコの高等教育改革――「新自由主義」と「グローバリズム」の波にもまれて
1 高等教育に対する評価制度の導入
2 グローバル化と大学改革
3 高等教育機関は誰のものか
【第3部】
第10章 ネーション・ビルディングと一般教育――フィリピン大学における一般教育プログラムの導入と改
革
1 1950年代の一般教育プログラムの導入
2 「再活性化された一般教育プログラム」――2000年代の教養改革
第11章 台湾の大学通識教育について――国立政治大学「通識教育中心」の活動を中心に
1 「通識」と「通識教育中心」
2 国立政治大学と通識教育中心の活動
3 国立政治大学の通識教育と漢語圏社会で求められる古典的要素
第12章 読書指導と教養教育――広島大学の取組みを中心に
1 『大学新入生に薦める101冊の本』の成立
2 『101冊の本』リニューアル
3 「広大生のための123冊」読書コーナー
4 「名著との対話」の提唱
5 東京大学の66冊
6 読書調査の結果が教えてくれるもの――むすびにかえて
第13章 日本の国立大学における教養教育の現状について考えること
1 商品交換の関係
2 グローバル資本主義と教育
3 国家の行方と教育