内容紹介
特に近年、研究者の不正行為事件が続発し、研究を行う主体の公正さが問われるようになってきた。本書では、科学の不正行為と、解法としての発表倫理教育の提案に力点をおきながら、レフェリーシステムの再考やオーサーシップの正しい理解などの具体的な話題を解説。また、科学研究活動は、発表なくして完結しないだけに、発表倫理は研究の公正さを総合的に検証するチャンスになる。研究発表の倫理 に焦点をあてることで、研究プロセス全体の公正さをチェックでき、自然科学だけでなく人文科学や社会科学領域へも応用できる幅広さを持たせることができる一冊。
目次
第I部 問われる発表倫理
1 発表倫理からのアプローチ
1 大学の変化
2 求められる研究倫理プログラム
3 発表倫理に着目
4 研究室を取り巻く空気
2 STAP細胞論文のゆくえ
1 まだ,理由は明らかになっていない
2 発端は小さなミス
3 コピペ問題とSTAP細胞ねつ造事件の異様さ
4 撤回処理は理解されていたか
5 これはコピペから始まった
6 どこまで行くのか
3 ミスコンダクトへの視点
1 ミスコンダクトとは
2 ミスコンダクトといかに向き合うべきか
3 危ない橋
4 産学連携の進行とゴア議員の対応
5 研究倫理教育へ向けて
6 事例からの出発
第II部 わが国の英文論文発表の生態
4 医学領域における日本からの英文論文発表の全体像
1 日本からの発信
2 1990年から2010年の発表誌ランク
3 総合医学誌と総合科学誌
4 上位を占める生化学雑誌
5 癌領域における発表誌の変化
6 考えるべき課題は何か
5 医学・生命科学領域における国内英文誌の国際性
1 国内英文誌の役割に変化が
2 どのように調査したか
3 国内英文誌に占める海外論文シェアの変化
4 海外からの発表論文の地域分布
5 国際性とインパクトファクターから見た評価
6 国内英文誌の今後
6 撤回される麻酔科論文172編の波紋
1 ねつ造論文の調査
2 ランダム化比較試験論文の生産と撤回論文
3 疾病主題から見た世界のRCT論文の生産と日本のシェア,麻酔科学分野の位置
4 海外からの発表論文はどのような雑誌と機関から発表されているのか
5 ガイドラインへの引用とシステマティックレビュー
6 ねつ造と共著関係
第III部 混迷するオーサーシップ
7章 メガ著者数論文の出現
1 単独執筆の時代は終わった
2 平均著者数と最大著者数の変化
3 主要誌を例とした著者数シェアの変化を見る(1965年と2011年初号の比較)
4 ビッグ・サイエンスから生まれるメガ著者数論文
5 分野別に見た平均著者数の変化
6 多数著者をめぐって
8 共著者の順番はどのように決めるのか
1 オーサーシップをめぐる苦情
2 寄与順か氏名のアルファベット順か,同等の寄与は
3 著者順を決めるガイドライン
4 共著者の順番,BMJ研究論文を対象にした試行調査
5 二次資料,索引専門家,図書館員からの視点
6 ローカルルールの改良
9 ギフト・オーサーシップ
1 オーサーシップの乱れ
2 データベースから見たギフト・オーサーシップ
3 ピアース事件
4 背景としての共著者数の変化
5 オーサーシップの定義
6 ギフト・オーサーシップとミスコンダクト(不正行為)
7 編集者の新たな役割
10 オーサーシップの考えを変える時だ
1 オーサーシップは贈物か?
2 オーサーシップ文献が示すもの
3 オーサーシップ定義の変化
4 若手研究者の声
5 コントリビューターシップ,著者の寄与内容を透明化する
6 オーサーシップの変化の時
第IV部 論文発表のミスコンダクト
11 盗用を考える
1 代表的なミスコンダクト
2 盗用論文を識別する,生物医学領域での事例
3 日本の事例
4 Lancet創刊号の巻頭論文
5 19世紀における盗用事件
12 会議での重複演題発表はどこまで許されるか
1 研究論文の一回性
2 会議抄録の論文化比率
3 会議にける重複発表を考える
4 近年の会議発表演題の重複率調査から
5 重複発表はどのように変更されたか
6 研究発表の一回性か教育機能の維持か
13 サラミ論文,LPU,Imalas
1 サラミとImalasは金太郎飴と似ているか
2 サラミを検索する
3 サラミ論文とは
4 Imalas出版
5 重複出版は資源の浪費
14 看護分野の撤回論文から見たミスコンダクト
1 撤回理由を明らかに
2 看護分野の論文生産数と発表倫理主題の特徴
3 撤回論文から見た看護のミスコンダクト
4 撤回記事表現とスタイルの問題
5 スコット・ウェーバー事件
6 エビデンスを強めるために
第V部 発表倫理の展開
15 レフェリーシステムを考える
1 主役は誰か
2 レフェリーの保守性に抗して,編集者の積極性
3 1970年代以前のレフェリーシステムをめぐって
4 ロック委員長によるレフェリーシステムのレビュー
5 再定義が求められている
16 研究倫理の教育をはじめるために
1 倫理をめぐって
2 文献から見た不正教育の現状
3 米国研究公正局の教科書から
4 九大講義は生体解剖事件から始められた
5 モデルとしての九州大学
17 引用句から発表倫理を考える
1 引用句への案内:Where do we go from here?
2 引用句と注記
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