内容紹介
生涯にわたる人間関係と発達を解説するテキスト。人生80年の時代を迎え、成人期以降の生き方をどうとらえるかは大きな問題になっている。本書の特色は、従来発達心理学が得意だった児童心理学だけでなく、生涯の発達段階を胎児期から高齢期までを扱っていること点。生涯という時間の流れのなかで、精神生活の移り変わりを、相互に比較可能な視点から、一定の展望ができる世界として描き出す。各章末には第一線の研究者による最新のコラムも17個掲載。
目次
第1章 発達心理学における生涯発達
1 児童心理学から生涯発達心理学へ
2 生涯発達と段階論
1)ハヴィガーストの発達課題
2)エリクソンの発達段階
3 生涯発達と生態論
4 生涯発達と関係論
1)システム
2)順序と系列
3)後世と創発
5 自己/他者/意味と生涯発達
コラム アロマザリングから見た子どもの発達
第2章 胎児期
1 妊娠することの意味
1)妊娠を待望した時代
2)妊娠を選択する時代
2 妊娠から出産へ
1)妊娠に気づくとき
2)胎動を感じるとき
3)わが子を胸に抱くとき
3 胎児の運動と感覚
1)卵体期
2)胎芽期
3)胎児期
コラム 出生前診断とわたしたち
第3章 新生児期
1 乳児感の変化――無能から有能へ
2 泣き・目覚め・眠り
3 人を志向する感覚
1)視覚
2)聴覚
4 微笑がもつ働き
5 新生児の自己感
6 新生児模倣と他者感
7 社会的脳
コラム NICUの赤ちゃんの人間関係
第4章 乳児期
1 情動の働き
2 乳児の自己感
1)対人自己感
2)身体自己感
3 乳児の他者感
1)人とモノの区別
2)他者の体験世界の気づき
3)他者の行動の意図の理解
4 自己感と他者感の発生モデル
5 意味に気づくとき
1)行動の意味
2)物の意味
コラム 重症心身障害児の人間関係
コラム 乳児期:赤ちゃんの食と人間関係
第5章 幼児期
1 表象・ことば・鏡像
1)表象能力
2)ことばの世界
3)鏡像自己感
2 心の理論
1)誤信念の理解
2)他者の経験知の理解
3 アタッチメント
1)アタッチメント研究の始まり
2)アタッチメントの安定・不安定
3)アタッチメントと心の理論
4 家庭から地域社会へ
コラム 自閉症臨床からみた発達:SCERTSモデルの発達観
第6章 児童期
1 小学生になること
2 児童期のアタッチメント
3 自我と超自我を育てる,安心なアタッチメント関係
4 アタッチメントスタイル
5 集団同一性と不登校
コラム 施設で暮らす子どもの人間関係
第7章 思春期(青年期初期)
1 思春期の始まり
2 情動調整を助けるアタッチメント関係
3 思春期における孤独の体験
4 思春期の適応と不適応――防衛機能の視点から
1)不適応的な防衛機制
2)適応的な防衛機制
3)思春期の子どもの心を育てる環境
コラム SNSと思春期
第8章 青年期中期
1 青年期中期の特徴
1)青年期中期という時期
2)何に悩むか
3)進路を選ぶ
2 仲間関係の広がり
1)仲間関係とは
2)友人関係の発達
3)友人関係の希薄化
3 自分自身を捉え直す
1)自己概念の発達
2)自尊感情の変化
3)アイデンティティの探求
4 青年期中期の自己の再構築
コラム 親に感謝するこころ
第9章 青年期後期
1 青年期後期の特徴
1)おとなか子どもか
2)成人形成期
2 大学生活の意義
1)進学率の変化
2)大学への適応
3)学生のタイプ
3 異性との関係
1)異性と親密になる
2)恋愛スタイル
3)アイデンティティのための恋愛
4 就職
1)求められる人材
2)進路未決定
3)アイデンティティ地位
4)就職活動による自己成長
5 社会との関わりの中で
コラム 恋人を欲しいと思わない青年の特徴
第10章 成人期
1 結婚と離婚
1)結婚年齢の変化
2)離婚率
3)離婚におよぼす影響要因
2 親になること
1)出生率
2)子どもを生むことによる変化
3)子育てがうまくいかない母親
4)パートナーとして
3 成人期の課題
1)成人期前期の課題
2)成人期後期の課題
コラム 他者とのよりよい関係を築くための「キャリア」選択
第11章 前期高齢期
1 老化と老成自覚
2 高齢者としてのアイデンティティ
3 老成自覚とエイジズム
4 老年期の自尊感情
5 老成自覚と健康
コラム 高齢者の閉じこもりと人間関係
第12章 後期高齢期
1 すすむ社会の高齢化
2 孤独になる
3 大切な人と別れる
4 人間関係を作り直す
5 老いた自分に寄り添う
コラム 死に対する態度と人間関係
第13期 超高齢期
1 寿命と人生の第9段階
2 パーソナリティの加齢変化と老年的超越
3 おばあさん仮説と世代間の互恵的関係
4 介護者と出会う
5 認知症の自分と出会う
6 幸福な老いを求めて
7 エピローグ
コラム 日本の百寿者研究