- イベント
【丸善創業150周年】出版物で辿る丸善の歴史 ~平成8年から現在~
今年は丸善の創業から150年を迎えます。
この節目の年に丸善の出版物を全12回の連載で振り返ります。
それぞれの時代を象った、丸善グループの写真や画像をご覧ください。
丸善出版 創業150周年記念プロジェクトチーム
出版業界 長期低落期 平成8年~平成18年(1996年~2006年)
出版業界は1996年の書籍と雑誌を合わせた2兆6,600億円の売上がピークで,その後,昨年まで22年連続のマイナス成長となり,2018年の売上は1兆3,000億円で市場規模は半減した。(『出版指標 年報 2019年版』出版科学研究所による)
しかし,書籍は2002年と2006年に前年を上回る売上を上げ,また,減少率も2010年以降は0.2~4.0%と微減にとどまっている。したがって,この落込みの多くは雑誌によるものといえる。
一方,電子書籍は2014年の1,100億円から2018年には2,500億円と伸びて売上を3倍に伸ばしたものの,その80%はコミックであった。
新刊出版点数は1996年の6万点から上昇をつづけ,2013年には8.3万点のピークを打ち,2018年は7.5万点であった。新刊点数の増加は自費出版物が大幅に増えたことが一つの要因とはいえ,売上が落ちる中で点数によってその落込みをカバーするという多くの出版社が行った自転車操業は返品増となって跳ね返り,返品が売上の減少と在庫増をもたらし,それへの弥縫策として新刊を出すという悪循環に陥った。その負のスパイラルに当社もまぬかれることができず在庫増に苦しめられた。
以上,出版業界の直近22年間の売上と新刊発行点数の推移をごくごく簡単に記したが,今月は1996年~2006年の10年間に限定して当社の出版を振り返り,2007年~2018年は“現在の取組み”として年末に先送りする。
1996年~2006年の当社出版の特筆すべき点を3点あげる。
1.改訂版の部数減少 |
||||||||
2.紙媒体以外の出版の取組み |
||||||||
3.医書の健闘 |
||||||||
|
||||||||
1.改訂版の部数減少 前月,当社の主力商品が改訂ごとに部数を落としたと記した。この時期もそれぞれ改訂版を出したが,次のような大変厳しい結果となった。 ・実験化学講座 第5版:2003~2005年刊行。各巻は「改訂4版」の5~6割の売行き。「初版」の2割に落ち込む。 ・化学便覧 基礎編 改訂5版:2004年刊行。「改訂4版」の6割の売上。「初版」の2割。 ・化学便覧 応用科学編 第6版:2003年刊行。「第5版」の9割の売上と健闘したが初版の2割。 ・建築設計資料集成:2001~2004年刊行。1978~1983年に出版した「改訂版」の2割。
上記,主力商品だけでなく,準主力の便覧や辞典の改訂も苦戦した。 ・応用物理ハンドブック:初版(1995)→第2版(2002)「初版」の4割。 ・表面物性工学ハンドブック:初版(1987)→第2版(2007)「初版」の3.5割。 ・標準化学用語辞典:初版(1991)→第2版(2005)「初版」の4割。 ・水処理管理便覧:用水廃水便覧(初版,1973)→改題(水処理管理便覧)(1998)「初版」の2割。 ・土木設計便覧:初版(1961)→新版(1998)「初版」の1割。 ・ボイラ便覧:初版(1964)→新版(1997)「初版」の2割。
この時期に出した新刊の便覧・辞典(事典)も著しく芳しくなく初版をクリヤーできないばかりでなく刷本の償却に至った。 ・丸善食品総合辞典(1998)/産業安全技術総覧(1999)/液晶便覧(2000)/電気自動車ハンドブック(2001)/光と化学の事典(2002) しかしこの時期,すべてが厳しかった訳ではなかった。 ・水の百科事典(20,000円,本体価格)(別掲):1997年発行。 販路を図書館に絞ったもので,本書の前年に出た『森林の百科事典』の第2弾に当たる。予想を裏切って6刷に達した。 ・化学物質毒性ハンドブック(全6巻)(別掲):2000年発行。 セット価格330,000円(本体価格)という高額であったが初版を早期に売り切った。
2.紙媒体以外の出版の取組み 主力商品の部数減少に直面して拱手傍観していた訳ではなかった。当社では1989年にEVAN(装置材料寿命予測)という計算ソフトを販売したのが最初で,その後MECHA-TOOL(機械設計)やPRODECE(化学工学)を販売した。しかし,当社には編集を手掛けるスキルはなく販売部数も小規模にとどまった。いずれも媒体はフロッピーディスク,対象機種はNECのPC-9800,9801シリーズであった。 CD-ROM出版に取り組んだのは1996年『理科年表CD-ROM』が初めてで,この時期のCD-ROM出版としてはこの他『気象データひまわり』『日本列島の地質』『学術雑誌総合目録』などがあるが,いずれも編集にはコミットしていない。 1999年に『実験化学講座CD-ROM』を出した。『理科年表CD-ROM』と『実験化学講座CD-ROM』はいずれも好調でCD-ROMからWeb版へと発展して実績を上げることができた。 しかし,CD-ROM→Webにつながった蔵版は2点以外になかった。この時期に目先の売上を求めることだけにエネルギーを注力し,他の多くのタイトルで蔵版の電子化とその普及にチャレンジする努力を怠った。 ※追記 現在、理科年表の大正14年の創刊から最新年度版までの膨大なデータにアクセスできる『理科年表プレミアム』と実験化学講座などを収載した『化学書資料館』という後継のWebサービスにそれぞれ移行しています。
詳細はこちらから
3.医書の健闘 小社の柱であった既存のタイトルが厳しさを増す中で,医書は新刊・既刊ともに好調でこの時期から医書が蔵版の中で大きな位置を占めるようになった。新刊では 『オックスフォード・生理学』(2001年)『ネッター・解剖学図譜 学生版 第2版』(2001年)『カッツング・薬理学』(2002年)『トートラ・人体解剖生理学』(2004年)などを出した。これらは単価が高く重版に至らなくても大きな売上を上げうるポテンシャルをもっていた上に,いずれも販売は好調であった。 既刊では『ハーパー・生化学』のイラストを増やしてスリム化した『イラストレイテッド ハーパー・生化学』(2003年)や『医科生理学展望』から書名を変えた『ギャノング・生理学 原書21版』(2004年)が改訂をしても理工系蔵版とは違って部数を落とすことはなかった。
高橋裕・久保田昌治ほか 編 A5判,898ページ,1997年発行,20,000円(本体価格)
実験化学講座CD-ROM 日本化学会 編 CD-ROM本文5枚+検索ROM1枚+取扱説明書,1999年発行 スタンドアローン30万円,LAN(1サイト)60万円(いずれも本体価格)
丸善 丸の内本店 開店 平成16(2004)年9月14日、東京駅丸の内側の再開発エリアの商業施設、丸の内オアゾに、当時日本最大級の面積を誇る丸の内本店を開店した。ショップコンセプトを「Book Museum」とし、「本・文具を中心にことばの芸術に触れ、心が豊かになれる空間づくり」を目指した。1 階から4 階の延べ1,750 坪の売場は、和書、洋書、文具、カフェ、ギャラリー等で構成され、和書のロケーション検索機(キオスク端末)も設置された。 |
檸檬万年筆 平成11(1999)年、創業130周年を記念して発売した万年筆。丸善の京都店を舞台にした梶井基次郎の小説「檸檬」から名付けたもので、鮮やかなレモンイエローの軸色が好評を博し、創業140周年、150周年の際にも、それぞれ記念商品として発売した。 |
日本橋店 建て替えのため閉店
建替えのため閉店した日本橋店 (昭和27年~平成16年の本社ビル)
|
平成19年に再開店した日本橋店
|
|
≪ バックナンバーと今後の予定 ≫
7月 オイルショックとその後の回復期(昭和48年~昭和60年)
丸善 創業150周年記念サイト
本記事に関するお問い合わせは、お問い合わせフォームよりお知らせください。