高校理科の授業で使える! 本物のデータを読み解く!
『環境年表』を授業に活用できる
ワークシートの提供を始めました
ワークシートを以下からダウンロードいただけます.ぜひ授業でお使いいただき,こちらのフォームより,活用事例やご意見・ご感想をお寄せください.
また,皆様のオリジナルのワークシートや授業での使い方提案もお待ちしております.
問題作成メンバー:
- 山藤 旅聞(都立武蔵高等学校・附属中学校)
- 奥津 憲人(文化学園大学杉並中学・高等学校)
- 宇田川麻由(筑波大学附属駒場中・高等学校)
- 佐野 寛子(都立国際高等学校)
問題監修:
- 伊藤 元己(東京大学大学院総合文化研究科教授)
環境年表とは
長年蓄積されてきた膨大な情報から,地球全体,局所的地域,生活環境などに関する正確な科学データを取りまとめ,「環境」を一冊に凝縮しています.地球温暖化,異常気象,酸性雨,オゾンホール,生物多様性,IPCC報告,福島の原発問題に端を発したエネルギー問題,熱中症,感染症などの関心の高い話題を取り上げています.他にも,地球外部(宇宙)が要因の環境変動や,大気や水の汚染,廃棄物などの産業や生活に関する環境データも掲載しています.
- 国立天文台 編
- 発行元 丸善出版(株)
- 本体 2,800円+税
- ISBN 978-4-621-30334-4
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紫外線の量は札幌と那覇でどのくらい差がある? 主要都市の冬日の日数はどう変わってきている?
このような,季節に合った話題のデータも見つかります.
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コイやヤギが「世界の侵略的外来種ワースト100」に含まれる?
表をながめていると,身近な種の意外な情報が得られることもあります.
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熱中症による年間死亡者数はどのように変わってきている?
気温,真夏日の日数など,関連するデータと比べることもできます.
ワークシート一覧
全国の多くの高校生が履修する「生物基礎」という科目(履修率95%〔平成28年度 日本学術会議調べ〕)には,「生態系とその保全」という分野があり,この分野の学習を通して現在の日本が抱える社会課題を理解することが求められています.各ワークの所要時間は30分から1時間程度を想定しています.
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1. ニホンジカの生息数変化
▼ワークのねらい
近年,日本ではニホンジカが急増し,生態系や農林業に深刻な被害をもたらしています.また,樹皮を食べられた木々が枯れ,森林が衰退するなどのさまざまな社会問題も生じています.この問題には,オオカミの絶滅や,日本人の狩猟文化の衰退が影響しています.このワークでは,日本のおもな大型哺乳類の分布の年推移データと,日本の狩猟者数の推移データとの相関を読み取ることにより,生徒たちがグループワークを通し主体的に,日本が抱える社会問題を理解することを目指します.
『環境年表』関連ページ
- 7.5.7日本のおもな大型哺乳類の分布(『環境年表 平成29-30年』p.313)
- 7.8.4日本の狩猟者数(『環境年表 平成29-30年』 p.351)
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2. 地球のエネルギー収支
▼ワークのねらい
エネルギーは,太陽放射によって地球に供給され,気象や生命活動に使われ,最終的には光や熱によって宇宙空間に放出されます.このワークは,地球全体のエネルギー収支のデータを見て,エネルギーの出入りと,地球温暖化の進行について考えることがねらいです.放出エネルギーが変化する要因はさまざまですが,大きな要因のひとつが温室効果ガスです.ワークでは,生徒たちがグループワークを通じて温室効果ガスの増減と地球温暖化の関連について考え,地球温暖化の原因も読み解き,地球温暖化についてエネルギーの観点から考えられるようになることを目指します.
『環境年表』関連ページ
- 2.2.1気候系のエネルギー収支:温室効果(『環境年表 平成29-30年』p.34)
- 2.2.2地球温暖化に係る温室効果ガス(『環境年表 平成29-30年』p.35)
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3. 地球の気候と陸上バイオーム
▼ワークのねらい
世界のバイオームの学習をするうえで,世界の気候について理解することはとても重要です.このワークでは,まず年蒸発散量と年降水量について読み解きます.海洋では年蒸発量は気温に比例しますが,陸上では年蒸発散量は気温に比例しません.さらに,世界のバイオーム分布図と合わせて,その気候からその地点のバイオームが成立する理由を考えさせます.気候は海流からも大きな影響を受けており,海流図からもバイオームについて考えます.年蒸発散量や海流図は教科書にはほとんど掲載されませんが,いずれも重要な気候要因です.調べれば答えがわかる課題ではないので,生徒たち自身が考えて話し合う場面を作り出すことがこのワークのねらいです.
『環境年表』関連ページ
- 5.1.8世界の年蒸発散量(陸域)と年蒸発量(海洋)(『環境年表 平成29-30年』p.150)
- 5.1.9世界の降水量(『環境年表 平成29-30年』p.151)
- 7.3.1世界のバイオームの分布(『環境年表 平成29-30年』p.279)
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4. 世界のバイオームと砂漠化
▼ワークのねらい
砂漠というバイオームは,降水が豊富な日本では,森林がよく発達するために実感を持ちにくいのですが,世界には降水量が少ないために森林が十分に発達しない地域が数多く存在します.そのような地域で,貧困や経済発展に伴う過度の土地利用がなされると,家畜の喫食や踏みつけなどによって植生が退行し,最悪の場合消失してしまうこともあります.このような現象を砂漠化と呼んでいます.このワークでは,気候とバイオームとの関連だけでなく,砂漠と砂漠化との違いについて考えます.さらに,どのような人間活動が砂漠化の原因となっているのかについて,環境年表のデータから読み解いていきます.
『環境年表』関連ページ
- 5.1.3大陸・海洋の水の存在量・循環量(『環境年表 平成29-30年』p.138)
- 5.1.11世界の乾燥地と砂漠化地域(『環境年表 平成29-30年』p.156,157)
- 7.3.1世界のバイオームの分布(『環境年表 平成29-30年』p.279)
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5. 気候と植物
▼ワークのねらい
生物は温度などの環境の変化に応答します.このワークでは,桜の開花という身近な事例を使って,植物の温度に対する応答を考えていくことがねらいです.また,桜の開花は桜前線として報じられますが,この日付も徐々に変化しています.ワークでは,環境に応答することだけでなく,環境応答と地球環境の変化を関連付け,この原因についても考えていきます.身近な現象を読み解き,未来についても考えていくことができるようになります.なお,二酸化炭素の増加は,ワーク②「地球のエネルギー収支」やワーク⑥「物質循環」とも関連があるので,あわせて取り組むとよいでしょう.
『環境年表』関連ページ
- 2.1.2日本の年平均地上気温(『環境年表 平成29-30年』p.23)
- 2.2.3大気中の二酸化炭素(『環境年表 平成29-30年』p.41)
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6. 物質循環
▼ワークのねらい
このワークでは,炭素,窒素の物質循環について考え,さらには肥料として欠かすことのできないリンの循環とその問題点にも踏み込みます.『環境年表』に掲載されている物質循環の図は,矢印の大きさだけでその大小が表現されたものではなく,実際の現存量の値が掲載されています.フラックスの数値を計算したり,比較したりすることを通して,人為的な活動がもたらす物質循環への影響を捉え,そのような科学的なデータをもとにして「持続可能な社会・開発」をどのように実現していくべきかを生徒たちが議論していくことがねらいです.
『環境年表』関連ページ
- 9.1.3地球表層(生物圏)における炭素の循環(『環境年表 平成29-30年』p.404)
- 9.1.4地球表層(生物圏)における窒素の循環(『環境年表 平成29-30年』p.404)
- 9.1.5地球表層(生物圏)におけるリンの循環(『環境年表 平成29-30年』p.405)
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7. サンゴの分布と地球温暖化の影響
▼ワークのねらい
海の生態系を支えるサンゴは1997年から1998年にかけて,地球レベルの温暖化に伴う海水温の上昇が原因となって大規模な白化現象が確認されました.サンゴが壊滅してしまったところでは,元のようなサンゴ群集に戻るには長い時間がかかると考えられています.今後,温暖化が続くことによるサンゴ分布の北上と,海水の酸性化に伴う南下が相まって,サンゴの生息域が極端に減少すること心配されています.このワークでは,温帯と亜熱帯のサンゴ調査地のデータと,各調査地域のサンゴ出現の推移データとの相関を読み取ることにより,生徒たち同士で見慣れないグラフを読み解きながら,主体的に社会問題を理解することを目指します.
『環境年表』関連ページ
- 6章Topic水温上昇にともなうサンゴ分布の北上(『環境年表 平成29-30年』p.252~254)
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8. 水鳥の渡りを考えてみよう!
▼ワークのねらい
水鳥は栄養段階の上位に位置するため,キーストーン種となりやすく,その個体数の増減は生態系に大きな影響を与えます.水鳥の多くは渡りによって適した環境に移動するため,保全のための国際条約としてラムサール条約がつくられました.ラムサール条約に指定される湿地にはさまざまな条件がありますが,逆に言えばその条件に当てはまらない湿地は指定されません.しかし,水鳥にとっては条件に該当しなくても重要な場所があるかもしれません.このワークでは,特定の種に着目し,湿地の場所と飛来する水鳥の個体数のデータを読み取ることで,生徒同士で水鳥の移動やそれに伴う保全すべき地域について考えることがねらいです.
『環境年表』関連ページ
- 7.5.5水鳥のおもな渡来地(『環境年表 平成29-30年』p.309)
- 7.5.6ハクチョウ・ガン・カモ類の観察数ベスト20(『環境年表 平成29-30年』p.310~312)
中学校・高等学校の先生方へ
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