内容紹介
気象庁は明治8年に創立以来、気象予報をはじめ波浪・地震・津波・火山についての情報を24時間体制で提供している社会活動および防災において必要不可欠な機関である。とくに気象予報の精度は国際的にも屈指の評価を受けており、現在では世界気象機関(WMO)の一員としてアジア地域の気象サービスの拠点となっている。
本書は長年、気象庁で観測・航空気象・予報業務に携わってきた気象学者が、気象観測の全体像と仕組みについて解説していく。また本文中では、それらに携わることを生きがいとし、天職として来た人々を尊敬と敬意の念を込めて「天気野郎」と呼び、彼らの活躍ぶりにも触れながら日本の気象観測と予測技術の変遷を興味深くたどってゆく。
目次
第0章 序章
第1章 赤坂葵町・代官町時代(1875〜1923) ―気象観測の始まり
1.1 「東京気象台」赤坂葵町に創立、気象観測の開始
1.2 皇居北の丸 代官町に移転 —天気予報の開始
1.3 「天気晴朗ナレドモ波高シ」
1.4 測候技術官養成所の創立 ―「気象大学校」の前身
コラム① 日露戦争の頃の通信インフラ
第2章 竹平町時代(1923〜1964) ―新しい観測技術と数値予報の幕開
2.1 竹平町にて新しい観測技術と数値予報を開始
2.2 ジェット気流の発見
2.3 中央気象台、戦時体制へ
2.4 国際社会への復帰と気象業務法の制定
2.5 高層気象観測(ラジオゾンデ)の導入
2.6 気象レーダーの開発と全国展開
2.7 東洋初の電子計算機導入
2.8 数値予報の幕開け
2.9 「アメダス」の運用開始
コラム② 風船爆弾
コラム③ 岡田台長、軍部の要請を拒否(中央気象台の独立)
コラム④ 「第1回数値予報国際シンポジウム」と椿事
第3章 気象観測の高度化と数値予報の進化(1964〜2021)
3.1 気象庁大手町へ移転 ―「地上気象観測装置」の展開
3.2 新しい数値予報の開始、ガイダンス
3.3 富士山気象レーダーの建設
3.4 気象衛星「ひまわり」の打ち上げ
3.5 ウィンドプロファイラ ―空の「アメダス」の導入
3.6 「雷監視システム(LIDEN)」の導入
3.7 気象予報士の誕生
3.8 アンサンブル予報の開始
3.9 コンセンサス台風進路予報
3.10 気象予測から見た海洋観測
コラム⑤ 「天気野郎」の面目躍如
コラム⑥ 「NCAR」留学
コラム⑦ アメリカ太平洋第7艦隊旗艦 ―大阪港へ
コラム⑧ 乙部道路
コラム⑨ 「ひまわり」と命名
第4章 虎ノ門時代(2021〜) —新たな時代のはじまり
4.1 「ひまわり」後継機
4.3 「線状降水帯」の予測
コラム⑩ 気象予測における「AI」
第5章 地球温暖化
5.1 地球温暖化の状況としくみ
5.2 温室効果ガスの状況
コラム⑪ 「プリンストン高等研究所」訪問