内容紹介
AI倫理と同様に、不平等・民主主義・権力・ポストヒューマニズムに関する問題に焦点を当て、人工知能を理解する上で社会的・政治的理論の重要性を提示。前著同様、AIに対する単なる警告や安易な非難を超え、AIの政治についてどう語ればいいのかを分かりやすく、かつ前著よりも掘り下げて解説。人工知能は本質的に政治的であり、人々が関心を寄せる人種差別、気候変動、民主主義と監視社会などの政治問題は、AIをはじめとする技術的発展に照らして、新たな緊急性と意味を持つようになっている。本書は政治哲学というユニークな視点を通して、AIの本質的な政治性を明らかにし、AIという権力によってもたらされる課題に対処するための、豊かな概念的ツールボックスを提供する。
目次
【訳者代表】直江 清隆(東北大学大学院文学研究科)
【訳者】金光秀和(法政大学環境学部) 鈴木俊洋(崇城大学工学部総合教育センター) 二瓶真理子(岩手大学人文社会科学部)
古賀高雄(東北大学知の創出センター) 菅原宏道(東北大学大学院文学研究科)
第1章 序論
・「コンピュータが間違えたんだな」:21世紀のジョセフ・K
・この本の意図、目的、アプローチ
・本書の構成と各章の概略
第2章 自由:AIによる操作とロボットの奴隷
・自由に関する歴史上の宣言と現代の奴隷制
・AI、監視、法の執行:消極的自由の剥奪
・AIと人間行動の操縦:人間の自律の迂回
・自己実現と解放への脅威。AIによる搾取とロボット奴隷の問題
・誰がAIについて決めるのか。参加としての自由、選挙におけるAI、言論の自由
・自由やその他の価値に関するその他の政治的に重要な観念
第3章 平等と正義:AIによるバイアスと差別
・平等と正義にかかわる問題の焦点、バイアスと差別
・なぜバイアスが悪いのか(1)英語圏の標準的なリベラルな政治哲学における平等と正義
・なぜバイアスが悪いのか(2)リベラルな考え方が持つ普遍主義に対する批判としての階級とアイデンティティの理論
・結論:AIは政治的に中立ではない
第4章 民主主義:エコーチェンバー現象と機械全体主義
・民主主義の脅威としてのAI
・AIは、民主主義、知識、熟議、そして、政治そのものへの脅威である
プラトンから始めてみよう:民主主義、知識、専門知/多数決と代議制を超えて/熟議民主主義、参加民主主義、それに対立す
る闘技的民主主義、根源的民主主義/情報バブル現象、エコーチェンバー現象、ポピュリズム/さらなる問題:大衆操作、統治
の代替、アカウンタビリティ、権力
・AIと全体主義の起源:アレントからの教訓
AIと全体主義/全体主義の起源と悪の陳腐さについてのアレントの考察
第5章 権力:データによる監視と(自己)規律化
・政治哲学における主題としての権力
・権力とAI:一般的な概念枠組に向けて
・マルクス主義:テクノ資本主義の道具としてのAI
・フーコー:AIはいかにして私たちを服従させ、主体へと作りかえるのか
規律化と監視/知識、権力、および主体と自己の制作・形成/テクノパフォーマンス、権力、AI/結論と残された問題
第6章 非人間については? 環境政治とポストヒューマニズム
・AIとロボティクスに関する人間中心的な政治を越えて
・政治に含まれるのは人間だけではない:動物や(非人間的な)自然の政治的地位
AIやロボティクスの政治に対する意味/AIが非人間や自然環境に与える影響の政治的意義/AIそのものの政治的地位?
第7章 結論:さまざまな政治的技術
・本書での議論と導き出される結論
・次になされるべきこと:政治的技術をめぐる問い
参考文献
索 引
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