内容紹介
日本の産業は、戦後60年を経過した21世紀初頭の現在までにいくつもの分野で世界をリードする優れた技術・製品を数多く生み出してきた。これらのイノベーション実現には外から見える華々しさの裏側に、開拓者達の血の滲む辛苦の連続があった。本書は、これらの先端分野の開拓当事者たちによって執筆された開発秘話の代表的なものを「日本発技術経営」という軸を通して、世界に発信すべくまとめたものである。21世紀の「イノベーション」を中心視点とする経営にとって、真に有用な知見に満ち満ちている。世界をリードする先端技術・先端産業は一体どのように開拓されてきたのか――「技術経営の真髄」に迫る話題が満載。
目次
第1章 MOTにおける歴史の検証の意義と重要性
1 なぜ歴史の検証か
2 実践をベースとした日本発MOT――苦難を克服した技術革新の歴史
3 歴史の検証の上に築かれる「日本発MOT」
第2章 研究開発における歴史の検証――イノベーションとはなにか
1 固体増幅器のアイデア
2 スカウトされたショックレー
3 トランジスタ現象の発見
4 ショックレーの無念
5 TFTから見放されたショックレー
6 なぜショックレーはTFTの実験に成功しなかったか
7 バイポーラトランジスタから電界効果型へ
8 ワイマーのTFT
9 カルコゲナイドICとMOSICとの争い
10 平面ディスプレイとTFT
11 液晶ディスプレイ
12 XYマトリクス方式からTFT方式へ
13 ブラウン管
14 高柳健次郎とテレビジョン
15 シャドウマスク方式のカラーブラウン管
16 TFTの出現
17 アモルファスシリコンTFT
18 低温ポリシリコンTFT
19 低温ポリシリコンの勝利
第3章 コンピュータ産業における歴史の検証
1 日本におけるコンピュータの発展の歴史
2 オンラインシステムの時代
3 インターネットの時代
4 ユビキタス情報社会に向けて
5 未来を考えるシステムアプローチ
第4章 日本のPC産業における歴史の検証
1 パソコンの特徴とその位置づけ
2 1990年のパソコン
3 1980年代の日本のパソコン
4 DOS/Vの出現とOADGの発足
5 OADGの戦略の考察
6 OADGの初期
7 OADG加速期
8 市場の拡大
9 技術部会の活動
10 WINDOWS95の発表
11 OADGの役目の終わり
12 MOTの観点から
第5章 半導体産業における歴史の検証
1 半導体産業のビッグバン
2 米国からの技術移転
3 トランジスタ・ラジオとトランジスタ・テレビ
4 電卓と電子時計
5 超LSIプロジェクト
6 日米半導体戦争
7 IC技術の変遷――CMOSへの道
8 マイクロプロセッサの誕生とそのインパクト
9 ムーアの法則と牧本ウェーブ
10 電子産業のパラダイム転換
11 デジタル遊牧民の時代
12 新世紀日本半導体の課題
第6章 電子顕微鏡技術における歴史の検証
1 電子顕微鏡の発明
2 日本における電子顕微鏡開発の歴史
3 世界に誇る日本の貢献
4 またしてもドイツに!
5 日本から発する新しい技術への挑戦
第7章 半導体レーザにおける歴史の検証
1 フォトニクス産業と半導体レーザ
2 レーザから半導体レーザへ
3 GaAs系ダブルヘテロレーザの誕生と研究開発
4 長波長半導体レーザの高性能化・高機能化
5 半導体レーザの高性能化・高機能化
6 これからの半導体レーザ
第8章 生命の設計書を読む――物理計測と数理解析の勝利
1 なぜ生命探求か?
2 なぜ生物物理か?
3 なぜ物理学教室か?
4 なぜDNAとタンパク質か?
5 半導体レーザの高性能化・高機能化
6 これからの半導体レーザ
第9章 自動車産業における歴史の検証――革新への挑戦
1 変化を先取りして対応する
2 知恵の値打ちが益々高まる時代
3 独創的な技術開発の要件
4 知恵を出すチャンスを与える
5 創造は自由な環境から生まれる
6 創造には野生が必要である
7 チャレンジ精神から創造が生まれる
8 行動を優先し失敗を認める
9 プラス思考が人を育てる
10 問題発見力を磨く
11 感動を与える商品づくり
12 異質の集積・組み合わせが創造を生む
13 慣性は独創力のスタート
第10章 デジタル家電における歴史の検証
1 デジタル家電とは
2 デジタル家電のルーツは電卓
3 電卓技術とそれを生み出したMOT
4 『電卓技術』の波及効果――家電から総合エレクトロニクス企業へ
5 緊急開発プロジェクトチーム
6 MOTの展開の基本コンセプト『多核経営』
7 MOTの根幹を構成する『事業展開コンセプトと勝てるシナリオ』
8 新しい経営資源としての『知識』とMOT
9 どん底家電 再生の条件
10 デジタル家電の今後の展開
第11章 化学産業における歴史の検証
1 化学工学パラダイム進化の歴史
2 日本の化学技術と国際競争力
3 化学工業の歴史の体験
4 今後の化学技術と技術経営
第12章 高経年化プラントの安全・安心に係る歴史の検証
1 化学プラントの安全・安心に対する社会環境の変遷
2 エンジニアリング企業の材料技術者が辿った路
第13章 21世紀に「イノベーション立国日本」を創る原動力「日本発MOT」
1 技術立国日本からイノベーション立国日本へ
2 21世紀に世界をリードする日本発MOT
3 日本創生に向けて
4 21世紀の企業を取り巻く環境――超ユビキタス時代への対応
5 21世紀の技術経営(MOT)にとって最も重要なものは何か